忘れていました無道SPIRIT!

圓光寺(えんこうじ)第49代住職・織田無道さんが都内のホテルで会見を行い、自身がプロデューサーを務める格闘技イベント「無道SPIRIT」の旗揚げを発表した。「無道SPIRIT」は第1回大会を9月16日に東京・代々木第2体育館で行い、第2回大会以降は5000人を収容できる会場で毎月の開催を予定しているという。
織田さんが第1回大会のテーマとして掲げたのは「“僧兵武術”を世に知らしめること」。
僧兵武術とは中国・少林寺拳法をルーツに持つ武術で、日本の僧侶(そうりょ)らが自警のための手段として学んでいたという。
当時天下布武”を掲げて全国支配を進めていた織田信長は、比叡山延暦寺の僧兵勢力を障害と見て焼き討ちにより殲滅(せんめつ)したが、その信長ですら手を出せなかったのが僧兵武術に長けた興福寺であったという。
戦国時代に最強をうたわれながらも、格闘技が競技化するにつれ姿を消してしまった僧兵武術。
織田さんは「今の時代・今後の時代に奥深い花を咲かせるために、僧兵武術が必要。現在のプロ格闘技に交えて、僧兵武術の秘伝を披露したい」と意気込みを語った。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/column/200707/at00013938.html

在野の戦国史家として言っておきたいのは、織田信長興福寺をはじめとする僧兵勢力を恐れたことは一度もなく、また逆に僧兵を持つ延暦寺本願寺を攻撃したのは、あくまでも彼らが織田信長の支配に両者が抵抗したためです。一般的に織田信長は旧勢力に対して無差別に暴力的抹殺をこころみたように思われていますが、実際には自分に恭順する勢力にはある程度の権益を認めた上で保護する非常に現実的な対応をしています。
そんな宗教勢力の中で織田信長と唯一脅かしていたのは、全国で爆発的に信者を増やし、中興の祖である蓮如の時代からその勢力を暴力的に変化させていった本願寺勢(蓮如自身はその変化に心を痛めていたとされていますが、法主のコントロールも効かなくなるほど本願寺の勢力が強大化していた証拠でしょう)だけでした。その他の対抗していた宗教勢力はすべて一瞬にして蹂躙されてしまっています。これは戦場での主要兵器の質的変化と、僧兵というものが兵士ではなくあくまでも個人の蛮勇に依った愚連隊的集団であったからです。
ちなみに興福寺は確かに強大な兵力を有し、平安時代から実質的に大和国を支配してきた一大勢力でした。しかし興福寺の利益代表である筒井氏が松永久秀ら三好党の勢力によって大和国から駆逐されて織田信長を頼ってからは兵力としての僧兵は無くなり、筒井順慶大和国守護職就任、さらに羽柴秀長大和国を支配することによって完全にその権勢は衰えていきます(江戸時代以降も2万石という大名級の知行を与えられますが、当然兵力を持つことは許されませんでした)。また宮本武蔵の小説等に頻繁に登場する宝蔵院胤栄・胤舜は興福寺の僧ですが、彼らは独自に研鑽を重ねた十文字槍の名手であって今回織田無道氏がアピールしている僧兵武術とは何ら関係はないでしょう。

また、「無道SPIRIT」では織田さんのプロデュースによるさまざまな演出が盛り込まれる予定で、「最大の目玉となるのがロックンロール」と織田さん。大会前にはロックバンドによる約40〜50分間の演奏が行われ、選手入場曲もすべて生演奏を予定しているという。
このほかにも、テコンドー世界王者チームによる演舞披露、JAC(ジャパン・アクション・クラブ)による演舞、さらには休憩時間中のフラダンス披露などが予定されている。

……ロックンロール……。ロックの定義が非常に曖昧で歌謡曲とロックの線引きが微妙すぎる現代の日本で、どのような「ロックンロール」を見せてくれるのか楽しみですが、格闘技ファンとロックファンが必ずしも合致していない中でロックに興味の無い格闘技ファンは非常に辛い思いをするんでしょうなぁ。